日本酒入門 ぽちゃこの酒道 番外編「日本酒のラベル&ボトルの制作秘話」

2020.02.21

ももどぅーと日本酒の新たな魅力を見つけてきた「ぽちゃこの酒道」。第3回までを読んでもらえたら、自分好みの日本酒を選べたり、お料理に合うものをチョイスできて、より日本酒を楽しめるはず!

これまでの連載を読んでないない方は下記からチェック↓
第1回 日本酒ってよくわからない><編
第2回 わたしにぴったりの日本酒が知りたい!編
第3回 日本酒と料理の美味しい組み合わせを知りたい編

ですが、お酒の楽しみ方はまだまだたくさん。ジャケ買いもそのひとつ。日本酒のボトルやラベルは、見ているだけで楽しくなるほどバラエティー豊かになってきています。

今回は、新潟県魚沼地方で始まった『十日町市酒米研究会』に参加されているふたつの酒蔵、松乃井酒造場さん、魚沼酒造さんに伺い、思わずジャケ買いしたくなる「ビジュアル推し」な日本酒エピソードを教えていただきました。

<十日町市酒米研究会とは…>
日本を代表する米どころ、新潟県の魚沼地方に位置する十日町市の農家と魚沼地方にゆかりのある8つ酒蔵が高品質な酒米を作るために立ち上がったプロジェクト。日本屈指の豪雪地で水にも恵まれたこの地域で、地の米と地の水をつかった本当の"地酒“づくりに取り組んでいます。

松乃井酒造場1
松乃井酒造場  古澤 裕さん(右) 古澤布美子さん(左)

編:松乃井酒造場が、ボトルやラベルのデザインに力を入れられたきっかけはありますか?

裕:これまで日本酒をあまり飲まれなかった若い方や女性に、まず目を止めてもらいたいという思いがきっかけですね。「松乃井」の文字をピンクのラメにしてみたり。それだけ? と思われるかもしれませんが、明治から続く酒蔵としてはこれもチャレンジでした。

松乃井酒造場2

編:そう思うと、先日「ぽちゃこの酒道」でも大人気だった「SUPER本醸造」はかなりのチャレンジですね!

松乃井酒造場

裕:そうですね。やはり、毎晩日本酒という世代が減ってしまったので、これからは飲みきりサイズ(500㎖)もつくりたいと思っていました。いい意味で日本酒らしくないボトルでつくってみたら、イベントであっという間に売れたんです。

そこで、ラベルも変えたいとデザイナーさんにお願いし、当社の杜氏6人がスクラムを組むように酒造りに取り組んでいるイメージを表現してもらいました。この花みたいなアイコンも、数字の6がひとつになっているんですよ。

編:ラベルの下にも杜氏のみなさんが堂々と立っているシルエットが! ピンクのボトルのほうの真ん中の赤いシルエットは布美子さんですか?

布美子:そうです(笑)。アイコンも7をモチーフにつくってもらいました。ラベルにはお酒造りのストーリーや、お客さまへの想いが込められるんだと気付きましたね。

編:「ぽちゃこの酒道」の取材時にモデルたちも興味津々だった「オンナの辛口」のラベルにはどんな想いが込められていますか?

松乃井酒造場

布美子:40代以上の大人の女性がずっと飲んでいられる「うまみがあって、でもすっきりした辛口」をお届けしたいという想いを込めています。毎日晩酌を欠かさない私が、単純に飲みたかったんです(笑)。酒蔵で試作してもらっている間、私も女性からヒアリングをして、ビジュアル面についても意見を集めていました。Facebookを使ってアンケートをとったりもしましたね。

裕:初めてラベルを見たときは驚きましたね(笑)。実際、妻(布美子さん)が販売店さんにかけあって、通常のラベル(写真左から3番目)と女性のシルエットラベル(左端)の「オンナの辛口」を置いてもらったところ、中身は全く同じだしシルエットラベルの方が100円割高なのに、2倍多く売れたんです。これはすごいなと思いました。

松乃井酒造場

布美子:このシルエットラベル、手貼りなんです(笑)。店頭でも目立っていたようで、販売店さんからも「シルエットラベルじゃないと置かない」と言われたことがあるくらい人気になりました。

今では「オンナの辛口」も、若い女性に飲んでいただきたい「VERGIN DRY」(写真中央)や、夏におすすめのスッキリ純米酒「SUMMER DRY」(写真右)などバリエーションが増えました。ラベルをきっかけに、いろいろな日本酒に親しんでもらえたらうれしいですね。

続いて、魚沼酒造さん。地元越後妻有で3年に一度開かれる「大地の芸術祭」とのコラボレーションボトルについてお話を伺うことができました。

魚沼酒造
魚沼酒造 山口勝由さん

 

編:「天神囃子」のアートボトル、すごくきれいですね。

山口:ありがとうございます。当社の「天神囃子」というお酒は、この地方で歌い継がれてきた天神囃子という祝い唄から名付けられています。そういったこともあって、「天神囃子」にお祝いのイメージを感じたデザイナーさんが、水引をモチーフにつくってくれたんです。2009年に完成したので、もう10年以上たちますね。

魚沼酒造2

編:お酒の風味とボトルのデザインは合っていると感じましたか?

山口:個人的にはとても合っていると思います。白ベースの「特別本醸造」は、ボディがどっしり。雑味がなくオールマイティに飲んでいただける感じなので、このくっきりしたストライプとマッチしている感じがします。赤ベースの「特別純米酒」は、白の「特別本醸造」よりも繊細な風味。ストライプの色味もちょっと落ち着いていて透明感があって、よく表現されているなと思います。

魚沼酒造3

編:アートボトルの評判はいかがですか?

山口:これまでに、さまざまなデザイン賞をいただいてきました。白の「特別本醸造」は世界最高峰のデザイン賞といわれる「AADアワード」に入選したり、紅白とも「アジアデザイン賞」を受賞したんです。国内だけでなく海外からも高く評価されるとは思わなくてうれしかったですね。

編:どんなお客さまが買い求められますか? どんなシーンで使われることが多いですか?

山口:地元のお土産にされたり、お祝いの席に紅白並べてくださったりと聞いています。引き出物に使われる方も多いそうです。偶然ですが、以前シンガポールに行ったとき、日本のセレクトショップにこのボトルが並んでいたんです! 海外の方にも人気なのかなとうれしかったです。最近は、中華圏から新潟へ旅行される方も増え、縁起のいい色ということで赤を基調にした「特別純米酒」の売上が伸びてきました。

編:この先、こういったデザインボトルやラベルに挑戦したいお気持ちはありますか?

山口:今すぐの予定はありませんが、「アートボトル」のデザイナーさんは、ふたに使われる和紙の裏表の質感にまでこだわっていて……そういった仕事ぶりを見て、私たちも自分たちが醸す「天神囃子」により愛着が湧きましたし、多くの方に手に取ってもらえるデザインの力を感じました。まずは、この「アートボトル」の天神囃子を大事にお届けしたいなと感じています。

魚沼酒造4


今回はふたつの酒蔵にボトルやラベルの制作秘話を聞いてきましたが、いかがでしたか?

最近はステキなボトルやラベルも多いので、ジャケ買いで日本酒を選択してみるというのも面白いと思います!
ぜひ日本酒を目にする機会があったらボトルやラベルにも注目してみてくださいね。



文章/岡島 梓