能町みね子連載「買わりばえのしない私」vol.08本誌発売と同日公開!!

買わりばえのしない私 vol.08
さ~て、今回の買わりばえは~? 避暑になってない避暑地と東京の往復の中で求めるキンキンの涼、カーペットの奥に入り込んだ愛しい毛と向き合うためのツールの2本です。んがぐぐ。

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2023年8月12日
スジャータアイスクリーム
ずんだを買った
 夏は青森に住んでいる。
 って、この連載で書いたかどうか記憶が定かじゃないので、ちゃんと書く。私は人一倍暑いのが苦手で、昔から「避暑」にあこがれがありまして。おととしから、青森市にふつうにマンションを借り、夏の間だけ住むというぜいたくなことをしているのです。
 そして、さらにぶっちゃけてしまえば、青森の新聞でも買い物についての連載をしているのである。青森での連載のほうが先に始まっていたのである。だから、青森で買ったものについてはこっちの連載に書きづらいという事情がある。
 ずいぶんぶっちゃけてしまった。私は仕事の文章では全部ぶっちゃけないと気が済まない性分なんです。
 だから、夏の間は当然青森で買い物することが多くて、ここに書くことがあまりなくて困っている。青森以外で買ったものをどうにかのっけていきたい。
 青森に住んでいても東京での仕事はそこそこあります。だいたい新幹線で移動します。片道3時間半くらい。長いですね。何か食べたい。ご飯どきじゃなくても何か食べたい。今年は青森に来ているのに全然涼しくないんだよ。時には東京より最高気温が高い日もあって、全く異常だよ。アイスばかり食べてしまう。車内販売のお姉さんが来ました。アイスだね。新幹線のアイスといえば知る人ぞ知る、凍りまくってガチンガチンに硬くておなじみのスジャータアイス。あれがおいしいんですよ。
「アイスはバニラと×△◎がありますが、どちらになさいますか?」
「え?なんですか」
「バニラと×△◎がありますが」
「??…えっと、バニラと?」
「バニラと、ずんだが」
ずんだ!! まさか新幹線アイスにずんだなんてフレーバーがあるとは思わず、脳が聞き取れなかった。東北新幹線だからなのか!?
 私はずんだ味のものが大好きですよ。私が子供の頃は、先祖をたどれば宮城県に行き当たる実家の祖母が枝豆をつぶしてずんだ餅を作ってくれたものです。当時から大好きだったけど、うちにしかないものだと思っていた。あれから幾歳月、ずんだもずいぶんとメジャーに進出したものだ。まさか新幹線アイスにまで登場するなんて、わたしゃ胸が熱いよ。
 ずんだ味でもスジャータのアイスはガチンガチンでした。


2023年8月23日
パクパクローラーを買った
 猫を飼っている人なら分かると思うが、服に猫の毛がつく。必ずつく。絶対につく。毎日、あらゆる服のあらゆる部分についている。
 私は正直、どうでもいいと思っている。だって我が家のかわいい小町のかわいい毛だから、なんなら服にちょっとついてるくらいのほうがオシャレだと思うよ。黒い服の日なんか、誰がどう見ても服に猫の毛がつきまくってる状態で街を歩くけど、別にそれでいいじゃんと思う。冷静に考えてみ。猫の毛と人間の毛、比べてみ。
 人間の毛→硬い・太い・(たいがいの日本人は)黒い・床に落ちてたらなんか汚い・お風呂に落ちてたらもっと汚い
 猫の毛→やわらか~い・細~い・ミルクティーみたいなかわいい色・床に落ちててもほぼ見えない・お風呂に落ちてることはない(猫は水場が嫌いだから)
 必死の説得は無駄に終わる。結果として私は世間に折れた。「猫の毛をつけたまま街を歩く人」はどうやらだらしないと見なされるらしい。青森の我が家の、居間のじゅうたんに絡みまくった猫の毛は取るべきだという意識はどうにか生まれた。
 しかしね、じゅうたんの毛と猫の毛ってがっちりからみまくっていて、掃除機なんかじゃ取れないのよ。だから取るのをサボってたの。いわゆる「コロコロ」も、粘着シートが一瞬で毛で埋まるから効率悪いんです。そこで、パクパクローラーなんですよ。
 通販みたいになってしまいました。私はこれをSNSで教えてもらった。
 服のホコリ取りみたいな素材がついたローラーでじゅうたんをゴロゴロすると、あらあら、みるみる毛が取れてローラーの中にたまっていく。これは楽しい。私もすぐに服に猫の毛をつけない、洗練された社会人になってしまう。さみしい。今後も猫の毛は積極的につけていく。じゅうたんに毛がついてなくても、毎日抱っこするから服にはびっしりつく。




Illustrator/Takayuki Kudo

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