【フェムテック】PMS(月経前症候群)との付き合い方を知ろう! -前編-

月経前の時期はイライラしたり憂鬱な気分になったり仕事に身が入らなかったり……。PMS(月経前症候群 読み:げっけいぜんしょうこうぐん)に悩まされる方も多いですよね。今後もそういった症状や身体の変化とうまく付き合っていくためにはどのようなことが大事なのでしょうか? 今回は大塚製薬の小野田さんに詳しいお話を聞いてきました。
\今回お話を伺ったのはこの方/
大塚製薬 女性の健康推進プロジェクト
小野田敦子さん

大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部「女性の健康推進プロジェクト」所属。健康の維持増進のための製品を担当する部署にて、女性の健康推進・活躍に関する啓発活動に従事している。
資格:薬剤師、スポーツファーマシスト

PMSってどんなもの?
編集部(以下編)
:本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、小野田さんが所属している「女性の健康推進プロジェクトの活動」に関してお聞かせください。こちらは具体的にどのようなプロジェクトなのでしょうか? また、小野田さんの活動に関してもお聞かせください。

小野田(以下小):「
プロジェクト」というと、それだけのために立ち上がった企画的な印象があるかと思うんですが、弊社の「女性の健康推進プロジェクト」とは部署名なんです。我々の部署では企画、営業、宣伝、学術、あらゆることを行っていますが、その1つとして「女性の健康を推進」するための啓発活動を行っています。例えば、女性ホルモンの働きに関する啓発ですとか。

:なるほど。今回は『啓発』という面で取材させていただきたいのですが、ラファーファ読者でも悩みが多いのが「PMS(月経前症候群)」に関してです。そもそもPMSはなぜ起こるのでしょうか。女性ホルモンとの関係性なども含めてお聞かせください。

まず、女性ホルモンの中には、大きく分類するとエストロゲンというものとプロゲステロンというものがあります。約1ヵ月の周期の中でこれらのホルモン変動があることで妊娠ができる体になるんですが、妊娠が来なかった時に赤ちゃんのためのベッド(子宮内膜)がいらなくなって排泄されることを月経と言います。その「月経前3~10日の黄体期の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経が始まると共に症状が軽くなったり、治まったりするもの」を「PMS(月経前症候群)」と言うのですが、実は原因ははっきり分かっていません。ただ、お薬でその波を抑えると症状が治まるので、ホルモンの変動があるために何らかの症状があるんだろうと考えられています。月経前に症状が起こるということは、ある意味正常なホルモン変動があり月経があるからこそで、別に女性ホルモンのバランスが崩れている、というわけではないのです。


PMSの症状に個人差があるのはなぜ?
:ホルモン値としては異常ではないということになると思いますが、人によってPMSの差はかなりありますよね。この要因を挙げるとすると何になるのでしょうか。

:PMS原因ははっきりとは分かっていないながらも、諸説あるのですが、その一説として言われてるのが性ホルモンの効きやすさ(感受性)です。ホルモンは受容体にくっつくことで働くんですが、そのくっついた後の "感受性" というのが人によって差があるのではないか、ということです。実はエストロゲンとプロゲステロンのホルモン値は正常な人とPMSの人で特に差がないんですよね。他にも、気持ちを落ち着かせる神経伝達物質への影響だったりとか、自律神経系の機能低下やバランスの乱れも関係してくるという説もあります。

:ちなみに、PMSが全くない方(感じない方)はいらっしゃるものなんでしょうか。

:「感じない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、我々の調査では現代の女性は約7割超の方が月経前に何らかの症状があるとお答えになっています。ただ、その症状がPMSかどうか「自覚がない(認識していない)」ということはあると思います。あとは、症状の程度がそんなにひどくなかったり、月経が来れば症状が治まるので「病院に行くほどでもないかな」って思ってしまったり「薬は必要ないな」とか「ちょっと我慢すればいいか」みたいな感じで過ごしてしまったり。実際、生活に支障をきたす中等症~重症の方は5%くらいといわれています。

仕事や私生活にも5割近くの女性が大きな影響を受けている
:症状が重くて仕事を休んだ、という声も周りからときどき聞きます。

:あるアンケートでは「PMSで実際に仕事のパフォーマンスが半減した」と回答している方が約半分もいらっしゃいました。会社や学校を休んではいないので気付きにくいかもしれませんが、仕事や学業にいかに大きな影響が出ているのが分かります。

:年齢によっても違いはあるのでしょうか。

:そうですね、症状のピークは20代後半~30代という報告はあります。ただ、ひとえに若い時ほど症状が重い、とは断言できません。40代になって月経痛等が重くなる方もいらっしゃいますし、PMSの症状が重くなる方もいらっしゃいます。

PMSのつらい症状を和らげるにはどうしたらいいの?
:ラファーファ読者にもPMSに関してのお悩みを募集したところ、身体面では「頭痛」「過食」「胸の張り」などの意見があったのですが、どちらかというと精神面でのお悩みが多かったです。「不安感が強くなってしまう」「イライラがひどくなる」「注意散漫になる」など……。こういった症状を和らげるために何かできることはありますか。

:まずは「自分の身体を知ること(認知行動療法)」といわれています。例えば何か症状があった時に記録しておく、というのを重ねていくと「自分ってこういう症状が多いんだ」「こういうタイミングで起こりやすいんだ」というのが分かってきますよね。さらに毎日基礎体温も測れたら理想的です! 実際にお医者さんにかかっても、すぐお薬というよりはこのようなやり方を提案されることが多いそうです。自分の症状を理解したり納得したり、客観的に受け止められることで気持ちの整理がついたり、予定を調整するなどうまく付き合えるようになることもあると思います。記録があると、受診した時お医者さんにも説明しやすいですよね。

:自分を知るというのはPMSに限らず大切ですよね、症状の変化にも気付きやすくなりますし。食事面も影響がありそうです。

:そうですね。当たり前のことですが、ご飯をしっかり食べるというのは重要です。朝ご飯を抜いている方の方がPMSの症状が重いという報告がありますので、まずは3食きちんと食べる。月経前は食欲が増加する、特に甘いものやジャンキーなものを食べたくなる方も多いのですが、3食食べることで余分なものの食べ過ぎ防止にもつながると思います。あとは糖分や塩分、脂肪のとり過ぎには注意してほしいです。栄養成分でいうとカルシウム、ビタミン類、鉄分がとても重要です。


PMSを和らげる注目の栄養成分たち
:栄養成分に関して詳しくお聞きできますでしょうか。どんな食品でとったらいいのかなど。

:栄養素の中でも、カルシウムが海外の2つの研究で非常に有効であると認められています。学生のころって給食があるので牛乳を毎日飲んでましたよね。その1パック約200mg分のカルシウムが大人になると、意識して摂らないと足りなくなってしまう。じゃあ、牛乳の代わりに豆乳ならいいかというと豆乳だと20mgくらいしかないので牛乳の代わりにはならないんです。小魚で補えればいいのですが、実際のところ、小魚もそんなに食べていなかったり。国民栄養調査の結果によると、カルシウムは食事摂取基準の値から200~250mgくらい不足といわれてるので、その不足分を補うくらいは必要かなと思いますね。一番手っ取り早いのはやはり牛乳。調理しなくてもいいですし。

:確かに、牛乳って大人になってから全然飲まなくなりますね……。ビタミンだといかがでしょう?

ビタミンやミネラル、ハーブ類の中で、有効性を検討する試験が多く行われてきたのがビタミンB6で、PMSの症状を緩和するのではないかという期待も高いです。今もいろんな研究がおこなわれています。その他にはビタミンD。カルシウムの吸収を助けてくれます。こちらはさけ、まいわし、さんまなどに多く含まれているのでお魚をまんべんなく食べるといいと思います。ビタミンDは食品からの摂取だけではなく、日光に当たることでも作れます。ただ、日焼け止めを塗ってしまうとできないので例えば掌を日に当てるとか(笑)。シミ・シワにはなりたくないので、顔は日焼け止めを塗って、顔以外のところを塗らずに日光に当たるといいですね。肌を日差しから完全ブロックされる方はPMS対策だけでなく、骨の健康や免疫にも影響してくるので、日焼け対策もそこまで過度にしなくてもいいのかなと思っています。

:ビタミンDを日光から作れるのは初めて知りました。あまり日焼け止めを塗り過ぎないようにします! あとは大事な栄養成分で言うと鉄分がありますよね。こちらはレバーから摂取するのがいいんでしょうか?

:そうですね。ほうれん草にも含まれるんですが、吸収しやすい形はお肉の中の鉄分。レバーが摂りやすいです。ヘモグロビンが基準値より低い方は貧血なのですぐに病院に行ってほしいんですが、ヘモグロビンは正常値なのになんとなく調子よくないなという方はフェリチン(鉄の貯蔵および血清鉄濃度の維持を行う蛋白)の値が基準値より低いことが考えられます。このフェリチンが低い方がPMS症状が出やすいことが多いので、フェリチンの値が低い方も、まず鉄分を補ってほしいです。そこを改善することで症状緩和につながる可能性もありますので。

:なるほど、ちなみに最近の注目成分などはありますか?

最近、PMS対策で注目を集めているのはビタミンEのひとつであるγ(ガンマ)-トコフェロール、γ-トコトリエノールです。通常、ビタミンEというとα-トコフェロールのことなのですが、別のタイプのビタミンE、このγ-トコフェロールやγ-トコトリエノ―ルは、体の中で余分なナトリウムと水分を排出してむくみをスッキリしてくれる効果があると言われています。これらの要素は、大豆油やコーン油、綿実油など植物油に多く含まれていますね。むくみ症状の強い方は、精神面での症状(否定的な感情)も強く、正の相関関係があると言われているので、むくみなど身体のお悩みが減ることで精神的な悩みも少なくなることが期待できます。

女性の病気予防に役立つ「エクオール」とは?
:他にも注目の成分はありますか。

:昔から大豆は女性の健康によいと言われているのですが、最近、大豆製品に含まれている大豆イソフラボンから腸内細菌の作用によって作られる「エクオール」が大豆イソフラボンのパワーの源であることが分かってきました。女性ホルモンの1つ、エストロゲンに似た構造を持っていて、女性ホルモンが関わるさまざまな不調や病気の予防と改善に役立ちます。ただ「エクオール」は誰でも作れる成分ではなく、作れるのは日本人の2人に1人。(欧米オーストラリアに比べるとアジア諸国はエクオール生産者が比較的多い)。エクオールが作れるかどうかはキットを用いた簡単な尿検査で調べられます。

:人によって作れたり作れなかったりする成分があることに驚きです……! 

後編では気になっている読者も多い「ピル」のお話も。お楽しみに!

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