【薬剤師監修】生理前から生理中の「猛烈な眠気」を上手にコントロールする方法

2021.11.09

「生理中に猛烈な眠気に襲われて、集中力が保てない」
「生理前に眠くなりやすく、何もやる気が起きない」

このようなお悩みをお持ちではありませんか?
眠気だからといって軽く見て放っておくと、毎月繰り返してしまったり、他のつらい症状も生じかねません。

生理による眠気には、普段から生活習慣を整えるセルフケアを行うことが有効です。眠気を予防できるほか、不調のでにくいからだを目指せます。

そこで今回は、「生理前から生理中の眠気の特徴・原因」「眠気の対処法・予防法」「生理の不調におすすめの漢方薬」をご紹介します。



 1.生理前や生理中の異様な眠気!その原因とは?
異様な眠気
 まずは、生理前から生理中に起こる眠気の特徴と原因をご紹介します。生理による眠気をコントロールするために、原因を理解していきましょう。

 1-1.生理前・生理中の眠気の特徴
生理前・生理中に起こる眠気にはいくつかの特徴があり、さらに、こころとからだにおけるさまざまな不調を伴います。

随伴症状も含め、まずは自分の眠気が生理による症状なのかをチェックしていきましょう。

<眠気の特徴・随伴症状>
・夜にぐっすり寝た気がしない
・なにをやっても集中できない
・日中眠くてボーっとする
・めまいがする
・からだがだるい
・普段気にならないことでもイライラする
・頭痛、腹痛、腰痛がある
・肌荒れしやすい
・おなかが張る

このように、生理前や生理中は眠気以外にもさまざまな不調が起こりがちです。生理に伴う眠気などの不調を改善するためには、原因を理解して、セルフケアをしていくことが大切です。


 1-2.生理前や生理中に眠くなる3つの原因
生理前から生理中の眠気には、次の3つが影響しているといわれています。

・プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量の変動
・セロトニンの分泌量の減少
・血中酸素の減少(貧血)

以下に詳しく説明します。

・プロゲステロンの分泌量の変動
プロゲステロンは女性ホルモンのひとつで、妊娠に備えるために基礎体温を上げたり、子宮内膜を安定させたりする働きがあります。排卵(生理の約14日前)から生理初日にかけて多く分泌されます。

私たち人間のからだは、夜間に体温が下がることで深い眠りにつくことができます。しかし、プロゲステロンの増加によって基礎体温が上がる生理前は、夜間も体温が高い状態が続きます。その結果、夜間の眠りが浅くなり、日中に異様な眠気が生じてしまうのです。

また、プロゲステロンが減少するときには「GABA」というアミノ酸も減少することが知られています。GABAは、交感神経のはたらきを抑制して脳の興奮を落ち着かせたり、緊張やストレスを緩和したりするはたらきがあるため、睡眠の質に影響します。

生理の約5日前ごろになると、プロゲステロンの減少に伴いGABAも減少するため、脳の興奮や不安感が強くなり、結果、不眠の原因になるのです。

・セロトニンの分泌量の減少
生理前から生理中は、女性ホルモンのバランスの変化だけでなく、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌量も減少します。このセロトニンの減少も、眠気に関わることが知られています。

セロトニンは、不安や緊張を和らげ精神を安定させる脳内の神経伝達物質のひとつです。睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の原料となるため、セロトニンの減少によって眠りの質が低下してしまいます。

そのため、生理前にセロトニンの分泌量が減少すると睡眠の質が下がり、その結果、日中の眠気につながってしまうのです。

・血中酸素の減少(貧血)
生理中の貧血も、眠気と関係しています。生理中は体内から多くの血液とともに鉄分が出ていくため、貧血が生じやすいといわれています。

血液中の鉄分が不足すると、からだや脳に酸素をうまく運べなくなります。その結果、酸素不足によって疲れやだるさ、睡眠障害や眠気を引き起こしてしまうのです。



 2.ホルモン周期による眠気にはどう対処する?
ホルモン周期による眠気
 生理前から生理中の眠気は生理現象ですが、日中のパフォーマンスが下がって困る人は少なくないはず。そこで今回は、実際に眠くなってしまったときの対策を3つご紹介します。


 2-1.仮眠をとる

どうしても眠いときは、思い切って仮眠をとることがおすすめです。

お昼に短時間の仮眠をとることで、午後の眠気の解消や活力・集中力アップが期待できます。昼寝をするなら、午前11時から午後3時の間に15分程度の長さが最適です。

反対に、30分以上の仮眠や午後3時以降の仮眠は避けましょう。30分以上の仮眠は、深い睡眠に達してしまうため眠気が残り、夜の睡眠にも悪影響を及ぼします。

眠りすぎを防ぐためには、仮眠をとる前にホットコーヒーを飲むといいでしょう。眠っている間にカフェインが体内にまわって、短時間ですっきりと目覚められます。

また、午後3時以降の仮眠は夜の眠りを妨げてしまうので注意しましょう。


 2-2.ストレッチをする
授業中や仕事中など、眠くても寝てはいけない状況ではストレッチがおすすめです。

ストレッチをすることで脳に刺激が与えられますし、血流の循環が促されます。座ったまま伸びをしたり、肩をまわしたり、軽い屈伸をしたりするだけでも効果的です。

トイレに行って気分転換するだけでも眠気の解消になるでしょう。


 2-3.ツボ押し
ツボ押しはどこでもできる対処法で、眠気解消に効果的です。

ツボは経絡上にある特定のポイントで、臓器とつながっているといわれます。そのため、ツボに刺激を与えることで血流が改善し、むくみをとることができるのです。

眠気には、労宮(ろうきゅう)というツボがおすすめです。

労宮は手の平の中心にあり、こぶしを握ったときに中指と薬指が当たるところに位置します。片方ずつ親指のはらで、心地よいと感じる強さで押しましょう。
労宮



 3.生理前から生理中の眠気を予防するセルフケア
セルフケア
生理前から生理中の眠気は、生活習慣を見直して正しいセルフケアを実践することで予防できます。昼間の眠気を和らげるポイントは、夜間の睡眠の質を高めることです。

以下に、睡眠の質の向上に役立つセルフケアを3つご紹介します。


 3-1.入浴で睡眠の質を上げる
寝る前の入浴で一時的に体温を上げることで、睡眠の質が高まり、日中の眠気を減らすことができます。また、良質な睡眠はホルモンバランスを整えるため、生理前から生理中の眠気予防に効果的です。

寝る2~3時間前に少しぬるめ(40℃程度)の湯船に20~30分ゆったりつかりましょう。半身浴もおすすめです。

寝る直前の入浴や42℃以上の熱い湯船につかると、交感神経が高ぶってしまい、睡眠の質が下がるため注意しましょう。


 3-2.朝や昼間に太陽光を浴びる
太陽光を浴びると、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が規則正しくなり、体内時計が整います。起床直後の太陽光が最も効果的なので、起きたらまずカーテンを開けて気持ちのよい朝を迎えましょう。

さらに、昼間に太陽光を浴びることで、昼と夜のメリハリを付けて、メラトニンの分泌量が増える効果が知られています。

10分程度でいいので、太陽光を浴びるために朝や昼間に散歩するのもいいですね。規則正しい生活を心がけて、快適な毎日を送りましょう。


 3-3.バランスのいい食事を心がける
ホルモンが正常に分泌されるためには、心身共に健康な状態であることが大切です。食生活を見直して、必要な栄養素をまんべんなく摂るように心がけましょう。

以下に、生理前から生理中の眠気予防におすすめの栄養素と食材を示します。

〈眠気予防におすすめの栄養素・食材〉
・鉄分
経血とともに失われる鉄分を補うことが大切です。
(例)豚レバー、しじみ、大豆

・タンパク質
鉄分だけでなく、タンパク質もヘモグロビンの材料となる栄養素です。血中酸素を増やして眠気を予防しましょう。
(例)鶏ささみ、豚ロース、さば、卵(白身)

・トリプトファン
セロトニンを作り出す栄養素です。体内のセロトニンを増やすことで良質な睡眠をとることができ、日中の眠気防止につながります。
(例)バナナ、大豆製品、アボカド、かつお節、玄米、鶏胸肉など




 4.ホルモン周期による眠気には漢方薬もおすすめ
漢方薬
 「食事や入浴など気を使っているのに、眠気が続いてつらい......」
「ホルモンバランスを根本から見直したい......」

そんなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、漢方薬です。

漢方薬は、婦人科で生理前から生理中の不眠やイライラなどの治療薬として使われています。根本的な体質から改善することを目的としているので、生理前後のさまざまな不調が同時に改善されることも特徴です。

また、自然の植物や鉱物を用いた生薬を組み合わせているため、一般的には西洋薬よりも副作用が少ないといわれており、体質に合っていれば高い効果を得られます。

「健康的な食事や運動を毎日続けるのは大変……」という方でも、漢方薬を使った体質改善なら、自分の症状や体質に合うものを毎日飲むだけなので、気軽に続けることができます。

日々の生活のなかで、お悩みの症状改善に漢方医学を取り入れてみてはいかがでしょうか。


〈生理中の不調におすすめの漢方薬〉

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):冷えのぼせがあり生理痛がつらい方
血の巡りを整えて全身の新陳代謝の促進をサポートします。また、女性ホルモンのバランスも整える効果が期待できます。

・加味逍遙散(かみしょうようさん):疲れやすく、肩こりやイライラを生じやすい方
血の生成や巡りを整えるほか、自律神経の乱れやホルモンバランスを整えます。生理中のメンタル不調による不眠や生理痛に用いられます。

・ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):疲れやすく、足腰が冷えやすい方
体内の余分な水分を取り去り、血を補い、血行を促うことで、むくみと冷えを取り去り、婦人科系の機能を活性化します。


漢方薬は自分の体質に合っていなければ、いい効果が見込めないだけでなく副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、購入時には、できる限り漢方に詳しい医師、薬剤師等にご相談ください。

「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、スマホで気軽に薬剤師に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスもおすすめです。AIと漢方のプロが効く漢方を見極めて、お手頃価格で自宅に郵送してくれる「オンライン個別相談」が話題です。

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 5.生理による眠気からおさらば! 快適な毎日を過ごそう
快適な毎日を過ごそう
生理前から生理中は、肉体的にも精神的にも不調がでやすい時期といわれています。日中に眠気が続くと、集中力ややる気が落ちて悪循環になりがちです。

生活習慣を見直してセルフケアを行うことで、生理による眠気の緩和が期待できます。今回ご紹介した「生活習慣」「おすすめの栄養素・食材」「漢方薬」を取り入れて、眠気しらずの快適な毎日を過ごしていきましょう。

なお、漢方薬を服用される際は専門家に相談することで、ご自身にあった漢方薬を知ることができるでしょう。



<この記事を書いた人>
薬剤師 杉岡 弥幸
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師 杉岡 弥幸
北里大学で生薬学を学び、卒業後は大手漢方専門店にて漢方薬剤師として勤務。現在は自身のダイエット経験や健康に関する知識を活かして、漢方や養生による体質改善方法をWeb等で発信している。

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