【特別インタビュー】AKB48衣装デザイナー茅野しのぶがプラスサイズの洋服作りに挑戦!

2020.10.23


「国民的アイドルAKB48グループの衣装を手掛けたデザイナーがプラスサイズの洋服を作る!?」


「しかも、あのファッションセンターしまむらで販売する!?」


驚きの情報を入手した編集部は、その真相を探るため、AKB48グループの衣装制作会社のもとに駆けつけ、デザイナー・茅野しのぶさんへのインタビューを行ってきました!

様々なアイドルの華やかな舞台衣装を手掛けてきた人物が、なぜプラスサイズの洋服を作ろうと思ったのか? 彼女はいったいどんな人物なのか? 謎多き彼女の人物像に迫るインタビューをどうぞ!


茅野 しのぶ(かやの・しのぶ)
1982年、埼玉県生まれ。
AKB48創設当初より総合プロデューサー秋元康氏の下で衣装担当として活動。13年3月、デザイン・衣装・ヘアメイクなどの事業を担うオサレカンパニー社の設立とともに、AKB48グループの衣装総責任者及びクリエイティブディレクターに就任。
AKB48のメジャーデビュー曲「会いたかった」の衣装デザインからはじまり、これまでに制作した衣装はおよそ 30,000着。メンバーの個性を引き出す豊富な衣装デザインとバリエーションに定評があり、AKB48グループ以外にも、=LOVE や≠ME といったアイドルから、声優、コスプレイヤー、2.5次元アーティストの衣装、さらに近年では学校制服のプロデュースなども行う。

◆アイドルにもコンプレックスはある! 自信の持てる服をデザインするのが仕事

編:茅野さんが服飾デザイナーを目指されたきっかけについて教えてください。

茅野:高校生のとき、文化祭に出るダンスグループの衣装をつくったら先生に褒められたんです。それまで褒められたことがなかったのでうれしくて(笑)、そういう選択肢もあるんだと思い、大学ではなく、服飾専門学校に進学することを選びました。

服飾にもいろいろあるのですが、私が興味を持ったのが舞台衣装。当時、ヘアショーやファッションショーがよく開かれていて、そのステージ衣装はどんなにこだわってつくっても一夜限りの命。その儚さに惹かれましたね。そこから、エンタメ系の現場で活躍されるスタイリストの師匠について、学生時代からアシスタントとして働く日々でした。

編:その後独立して、AKB48の衣装スタッフとして活動されるんですね。

茅野:そうですね。秋元康さんが「会いに行ける劇場型アイドル」を育てるという話を友人から聞いたんです。アイドルグループができるということは、ステージの衣装が必要になるはず。「衣装担当って、もういますか?」と自分から売り込みに行きました。22、3歳の頃ですね。

編:すごい行動力!

茅野:振り返るとそうですね(笑)。もし上手くいかなくても、一からなにかを作り上げていく経験が積めるのは貴重だ! と思って飛び込みました。自信満々に見える行動ですが、実際は自分にしかない確固たる自信がないからこそ出来た行動でした。アシスタント時代も自分の未熟さ、不甲斐なさも感じ泣きながら帰ったことも沢山ありました。でも、泣いても誰も助けてくれない…自分でいかに自分の商品価値を高めるか…その為に勝算がどこにあるか考えるようになりましたね。

AKB48の運営会社へ面接の為に行った時に会社にほぼ男性しかいなかったので、「衣装以外にも同じ女性なので女の子達のお世話や雑用も現場マネージメント的な事も頑張ります!」とアピール。採用したら役に立つかなと…。

編:それは、運営側も心強かったでしょうね。その中でもメインだった衣装デザインですが、大切にされていることはありましたか?

茅野:2つありますね。ひとつは着る人の自信になって、実力が100%発揮される衣装にしたい。なので、着やすくて、動きやすくて、着てくれた子のテンションが上がるデザインを考え抜きます。立体感があって安っぽく見えない生地感や仕様にはこだわっていますね。アイドルは歌って踊るので、360度どこから見てもかわいいかどうかは大事。

もうひとつは、アイドルたちを見た「受け取り手」がどう思うかを想像することです。新曲の歌詞がメッセージ性の強いものだったら、歌詞に注目してほしいのでシンプルな衣装に、アイドルらしいかわいい曲なら、一人ひとりに注目してもらいたいのでメンバーの個性を生かした衣装にしています。どんな風に受け取られたかを知って次につなげたいので、Twitterの反応も結構見てます(笑)。

編:今回は衣装ではなくプラスサイズの洋服デザインですが、違いはありましたか?

茅野:実は、あまり違いを意識しませんでした。完璧に見えるアイドルにも、コンプレックスは必ずある。衣装も洋服も、それぞれのコンプレックスをフォローする道具という意味では同じです。着る人が自信を持てるものをつくりたいという思いは変わりませんね。アイドルだと、自信からオーラが生まれ、説得力が出る。そこから存在感が出てくると人気になる。というループがありますが、すべての始まりは「自信」なので。

◆「今、ちょうど着たい服」をラファーファ読者に届けたい

編:プラスサイズの洋服デザインのお話が来たとき、率直にどう思われましたか?

茅野:私が働くオサレカンパニーにはもうひとりぽっちゃりした女性がいて、その子と一緒に「こんな服あったらいいのにね」とか話すことも結構あったんです。自分たちがほしかった服をつくれるかもしれない! とすごくワクワクしました。

しまむらへの最初のプレゼンも気合いが入って、ブランド名まで最初から決めてました(笑)。「アクチェ」は「メリハリ」という意味を持つフランス語。ふくよかな女性も、メリハリのあるシルエットの方がキレイに見えますし、お仕事を頑張る女性もプライベートはメリハリつけて思い切り楽しんでほしい! という想いも込めてつけました。「アクチェ」という響きも呼びやすくて気に入っています。


編:ぜひ「アクチェ」のお洋服について教えてください。

茅野:「服は持っているはずなのに、その日着ていく服が見つからない!」という女性のお悩みをよく耳にしていたので、アクチェがお届けするのは「今、ちょうど着たい服」。着回しもしやすくて、しかもお手頃! なにより私も着たい服です(笑)。

編:ここはぜひ注目してほしい! というこだわりポイントはありますか?

茅野:ひとつは、カラーですね。2020のAW(秋冬)のトレンドはくすみカラー。ピスタチオカラーなど、ぜひ試していただきたいです。

ラインにもこだわっています。バックスタイルまでキレイに見えるように、少しつまんでウエスト部分をシェイプしたり、細かな工夫でメリハリをつけています。あとVネック! ふくよかな体型の方は胸元が開くと、とたんにセクシーになりすぎちゃうので(笑)。谷間がギリギリ見えない、こちらも絶妙なVになってます。

編:想像以上に、大人っぽい雰囲気なんですね!

茅野:ぽっちゃりした女性は、どんなファッションも割とガーリッシュなイメージに仕上がるので、大人が着られる日常服にしたいと思っていました。襟をバイカラーにしてアクセントをつけたり、クラシカルなガンクラブチェックを取り入れたり、今年らしいお洒落を楽しんでいただけると思います。

しまむらの担当者さんとも、白熱した会議を重ねました。「アクチェの服ができるまで」のドキュメンタリーをお見せしたいくらい(笑)。お互いに「いい服を届けて、お洒落を楽しんでほしい」という大目標があるから「ここのレースをつけるorつけない」とか、細かすぎる攻防を重ね、ようやくできあがった汗と涙の結晶です。10月28日発売予定なので、かわいがっていただけたらうれしいです(笑)。

◆ラファーファ読者が本当にほしい服を、いつか一緒につくれたら

編:ぽっちゃりした女性に伝えたい、ファッションのポイントってありますか?

茅野:ぽっちゃり体型の方は、やわらかく優しい雰囲気に見せられるのがいいところなんですが、反面、普段着感が出すぎたり、だらっとした感じに見えてしまうこともある。だからこそ、少しキレイめだったり、フォーマル感のある服を選ぶときちんと感が出ておすすめです。

編:茅野さんの、ファッション持論を教えてください!

茅野:“1番のコンプレックスは隠してもいいけど、それ以外は出してもいい!” ですね。私の場合、一番見せたくないのは二の腕。でも、次に気になるおなかも隠そうとすると、着られる服が減ってしまうんです。「二の腕を隠せる」という条件さえ外さなければいいんだ。と思うと、今まで目に入ってこなかった服もターゲットになるので、洋服選びも楽しくなりますよ!

あと、人から褒められた服は覚えます(笑)。きっと、雰囲気や体型に合っているので、似たシルエットや色味を意識して揃えていくと自信が持てます。

編:最後に「アクチェ」の服をまとったぽっちゃり女子が、どんな風に感じてくれたらうれしいですか?

茅野:「今の自分も、なかなかいいじゃん!」と感じてもらえたらうれしいですね。コロナ禍で貴重になってしまったお出かけの機会を、アクチェの服で楽しんでほしい。デザイナーとしては、登場回数の多い服になってくれたらいいな。というのが一番の願いです。

また、ラファーファ読者のみなさんは、ファッションへの感度も高い方ばかり。私の独りよがりではなく、みなさんとSNSやHP上で意見を出し合って本当にほしい洋服をつくり、愛されるブランドに育てたいです。

今は、作り手と受け取り手の距離が近いし、境界線もあいまいになっています。ラファーファの読者のみなさんが「アクチェ」を通じてモデルや洋服デザインに興味を持たれるかもしれません。みなさんと一緒に、新しいムーブメントをつくっていきたいですね。

めちゃくちゃ理想の未来を語ってしまいましたが、アイドルの新曲と一緒で初動が大事なので! ぜひ「アクチェ」をよろしくお願いします!

最新情報は公式サイトやInstagramでチェックしてくださいね!

【アクチェ公式サイト】http://acuite.jp/
【アクチェ公式Instagram】acuite_official



取材:岡島梓
写真:中島福美

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